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「山尾三省 『リグ・ヴェーダの智慧』と天竺南蛮情報」(喫茶茶会記店主 筆)
20150623



2015/7/19にある喫茶茶会記の企画イベントの宣伝文ということにもなるが
山尾三省の名著 『リグ・ヴェーダの智慧』は天竺南蛮情報での連載をまとめたものである。
もっとも都内でクールな古本の配列ともいえる渋谷・フライングブックスには山尾三省のコーナーがある。
その下段には友達でもあるトランジスタプレスのビート本もありフライングブックスには親近感がある。
山尾三省のコーナーには新著が並べてあり畏敬も感じられた。


本書 あとがき より抜粋引用

『リグ・ヴェーダ讃歌』と呼ばれる森は、人類史上の最古の文献の森のひとつであるにもかかわらず、一般的にはほとんど知られていない。摩居不思議の森ということができるだろう。これほどに各種の情報が行きわたる社会にあって、古代インドの殼深奥に『リグ・ヴェーダ讃歌』と呼ばれる文献の宝の森が確固として存在することが知られないのは、私の感覚からすれば、目本の知識人達と学術出版界を支える人々の知的貧困と、相も変わらぬ欧米志向をまさしく象徴しているできごとのように思われる。この上うな悪□は別において、すでにこの本を読み終えられた読者には、『リグ・ヴェーダ讃歌』という森が、どれはどの豊穣を秘めた宝の森であるかということは、ほんの入口ながらも充分にお分かりいただけたことと思う。
本文中にも記したように、私がこの本に引用したのは、森全休の千分の一にも満たない微々たる部分であり、その森の全体に分け入るならば、人は古人達のこの宇宙の森羅万象を讃える叡知という、汲めども尽きることのない泉と大樹に、到るところで出会わぬわけにはいかないだろう。しかしながら、まことに残念なことに、日本中のすべての書店や図書館を探したとしても、『リグ・ヴェーダ讃歌』の全訳本を見つけ出すことはできない。かろうじて私がこの本のテキストとした、辻直四郎訳の岩波文庫版が、抄訳としてそのさわりの部分を伝えてくれるだけである。私としては、直接にはお会いしたことのない辻直四郎先生が、このような稀有な訳出の仕事をされたことに心からの敬意を抱くけれども、この本の引用でお読みになった読者にはすでにお分かりのように、その訳文は現在となってはあまりにも古文調である。韻文の訳といえば古文調という半世紀前の常識がそのまま踏襲されていて、時には読み進めていくことに苦痛をさえ感じた。そこで、あまりにも苦痛な場合には、私の判断において若干ではあるがその文体を修正して、少しでも読みやすくする方法を選んだ。私としては、辻直四郎先生という稀有な宝の森の伝達者に心から感謝するとともに、一日も早く、一年も早く、若いサンスクリット哲学者か文学者が、現代文において新たな『リグ・ヴェーダ讃歌』の全訳に取り組み、それを支えて積極的に出版する出版社が現われることを望まずにはおられない。

次にこの本の内容についてであるが、これは『天竺南蛮情報』(東京ジューキ食品螢澄璽献螢鷁餞)という月刊の小冊子に、1994年2月号から1999年の12月号までの、じつに5年11ヶ月間にわたって連載させていただいたものを一冊にまとめたものである。それ以前の数年間は、私は同誌に同じく古代インド哲学文献としてのウパニシャッドをテキストとして連載させていただいたのだが、そちらの方は筑摩書房から『屋久島のウパ二シャッド』と題して、すでに出版されている。ウパ二シャッドという、現代にも充分に普遍化され得る哲学的、宗数的課題の森を歩き終えた上で、さて次にはどんな森に歩み入ろうかと考えた私は、ためらうことなくそのまま真直ぐに、その地続きの、さらに古廟の森であるリグ・ヴエーダ讃歌へと踏み入ってきた。この森は、すでにこの本を読了された方にはお分かりのように、この宇宙の森羅万象のカミガミを讃えた讃歌集であって、一般的な意味における哲学書でもなければ宗教書でさえもない。太陽や水、季節や大地や心の在りようなどまでもが、カミガミとして讃えられているだけの、素朴といえば素朴、単純といえば単純きわまりない人間性の確認と発掘が行なわれている世界である。そうであるにもかかわらず、この森に踏みこんだ者は、そこからもう二度と出たくないという気持に駆られてしまう。この森にあっては、アニミズムという人間性の中核に存在する存在様式が、息吹となって、泉となって、到るところから噴き出し、溢れ出してくるからである。


以下略











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